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参加者の声

渡辺節子の旅2003-1(3/21-4/4)

野生の花咲きレモン薫るギリシャとクレタ島の旅15日

          ワールドステイクラブ会員加茂孝子

写真提供 渡辺節子

世界の関心がアメリカとイラクに向けられ、賛否両論のうちに戦争に突入。当時の状況から旅行をキャンセルした方々が少なくなかったと思うが、そんな心配をよそに、それぞれの思いに胸膨らませ、戦争開始翌日「渡辺 節子の旅」はギリシャに向けて飛び立った。
今まで、全ておまかせの旅行会社のパックツアーしか経験が無い私は多少の不安を抱きながらの参加だった。しかし、全員が揃ってみると、WSC会員とその他の混成メンバーから成るヤングレディからシニアまで、と年齢層の厚いバランスのとれたグループになっていた。旅行中は“付きすぎず離れすぎず”の程よい距離を保ちながら、各自が自分流の旅の楽しみ方をチョイス可能であったことはとても嬉しかった。 

3月下旬のギリシャは太陽が高くなり、日脚が伸びて、色とりどりの花が咲き始め、海が和らぐ。各国から観光客が訪れる、旅行シーズン前のほんの少しの間、ギリシャ各地の古代遺跡は修学旅行や遠足の学生たちを迎い入れて華やぐ。賑わい栄えていただろう都市国家、遺跡にも木にも花にもそれぞれに伝えられている神々の伝説、ガイド、ディピさんの“皆さん、想像を膨らませてみて”のクラシカルツアーはこの季節ならではの心弾む旅だった。

カモミールの花が太陽の光をうけて一面に咲いている姿はまるで白い絨毯。ここオリンピアの遺跡にある競技場に入ると、中の直線コースを見学にきていた学生たちが、丁度横並びになって一斉に走っているところだった。それを見てグループの中でも特にチャレンジ精神旺盛な香川さん、永田さん、山田さん、岩井さん、尾見さんが学生たちの後に続いて走りだした。そして、見事完走!我々の拍手に混じって、観覧席からゼウスとヘラの拍手が聞こえてきそうなどのどかな競技場だった。

寒い寒いと思って朝目覚めたら、外は雪。嬉しい驚きだった。
その日は積もった雪に滑らないよう、気を付けながらのディルフィ見学。神殿も野外劇場も競技場も、傍らに咲くアーモンドの花や野生の草花も、更に周囲の山々や眼下の谷間まで全てが雪を被ってとても幻想的な景観だった。

天まで届けとばかりに高い高い奇岩の頂上に建てられた、ビザンチン時代のギリシャ正教の修道院。青い空を背景に、正に“空中に浮かぶ修道院”だった。教会の中は私が今まで見慣れてきた西欧の教会とはまるで違っていた。正面に仕切りがあり、そこには聖母、キリスト、聖者のイコンが掲げられてあって、祭壇はその奥にあり目にすることができなかった。僧だけが閉ざされている入り口から入って祭壇の前に進むことがでる、というのだから荘重な雰囲気の中にも興味ひかれる教会の内部だった。女性たちが見学の時に借りてはいたズボンの上からのスカート姿、我々は愉快な格好になってしまったが、さすが若者たち、ニューモードのように格好よく着こなしていた。

クレタ島は旅行中ずっと穏やかな天候だった。エーゲ海の中で最大の島、高い山々は雪を頂き、至る所に出没する羊たち、行く先々で目に飛び込んでくるオリーブの木とぶどう畑、たわわに実ったオレンジと黄色いレモン、アーモンド、ミモザ、エニシダ、ポピー、野菊、もう数え上げたら限が無いほどの花が色とりどりに咲き乱れ、おいしい食べ物とお酒があって、人々は親しみやすく素顔に出会える島。日本で頻りに言われている“Slow life”がぴったりの島だった。

 その昔、奥深い地下室にミノタウロスという怪獣が閉じ込められていたという神話伝説があるクノッソス宮殿跡。我々が訪れた時には中庭に面した中央階段の下にネコの親子が住み着いていた。ネコたちは大切にされているらしく、綺麗な毛並みをしていた。また、見学に来ていた現地の小学生たちが“こんにちは”と彼等の方から挨拶をしてくれたのにはとても感激した。初めは日本人かな?と不安そうな感じだったが、“こんにちは”と挨拶を返すと、やったー!と、いうようにほかの子たちからも“こんにちは”の挨拶と共に素晴らしい顔かえってきた。

 伝統村アロリストでは料理作りにも参加し、その後食事とハウスワインを頂きながら音楽とダンスを楽しんだ。帰る頃には、夢中で捏ねたパンもふっくらと焼きあがっていて、お腹も心も満足して、気持ちはすでにクレタ人!になっていた。クレタは野菜、魚介類、肉などが新鮮で、オリーブオイルとレモンをふんだんに使う。土地の人たちは新鮮な大きなレモンを二つ切りにして、フォークを差込みぐるりと回してギュッと絞り、バシャバシャと料理にかけて食べていた。

ハニアでのホテルはヴェネチア時代の城砦や城壁が残っているヴェネチアン・ポートにあった。その日グループの方々はサマリア渓谷へ。私は一人で穏やかな佇まいの旧市街をぶらぶら散策し、海を眺めてぼけーとした1日を過ごした。夕暮れ時、山際さんとカフェでグリーク・カッフィを飲んでいたら、ハニアの青年に漢字を教えてほしいと頼まれた。愛、平和、・・我々の家族の名前から何と十二支まで。彼の名前のジョンを漢字で書いて、といわれたのには困ってしまった。青年の大好きな漢字は 龍 だった。

アテネでの帰国前日、グループの方々はエーゲ海クルーズへ。私は14年前に訪れているので今回はパスして、アテネ市内を一人のんびりと見物することにした。古代の遺跡と近代的な建物が混在している街中を歩いていると、確かに新しいビルは増えていたが、建て方一つにしても、自分たちの古代の歴史を大切に守ろうとしているギリシャ人の思いが伝わってくるようだった。

歴史、文化、音楽、生活、風景、どれを採っても現在と過去が交錯するギリシャの旅は、知識豊富な現地ガイドさんの解説、渡辺さんの細やかな通訳、好奇心をそそられる行程などから、実際に訪れてみなければ分からない旅の面白さをたっぷりと味わうことができた。

また、気になっていたイラク戦争の影響は特になかったものの、“戦争反対”の集会やデモ行進が各地で行われているとの話は耳にした。事実、イラクリオンでは、広場に作られた舞台上で民族楽器を奏でながら反戦歌を歌っていたしそこに集まっていた子供から大人まで、大勢の人たちが戦争反対の小旗とキャンドルを両手に持っていたのも目にした。この後彼らはデモ行進するとのことだったが、警備にあたっていた多くの警察官はこの様子を静かに見守っていた。痛みを伴う戦争に対する人々の思いが、この時期ギリシャ全土に満ちていたのを感じた旅でもあった。


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